バーチャル(仮想空間)で開催される株主総会が注目されています。今回は、バーチャル株式総会の概要とともに、バーチャル株式総会の利点や開催における注意点を解説します。バーチャル株式総会の準備の心得についても触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
バーチャル株主総会とは、取締役や株主等がインターネット等を活用して遠隔地から参加・出席できる形式の株主総会です。
そもそも株主総会には、以下の3種類の開催形式があります。
・リアル株主総会
・ハイブリット型バーチャル株主総会
・バーチャルオンリー型株主総会
従来通り対面式で行われるのは「リアル株主総会」です。リアル株主総会を開催する一方で、会場にいない株主がインターネット等の手段を用いて参加・出席できる形式は「ハイブリッド型バーチャル株主総会」と呼ばれます。さらに、ハイブリッド型バーチャル株主総会は、主に傍聴のみでの参加となる「参加型」と、決議権行使や質疑応答ができる「出席型」に分かれています。
そして、リアルな株主総会を開催せず、取締役や株主等がインターネット等を活用して株主総会に出席する形式が「バーチャルオンリー型株主総会」です。
・高機能なWeb会議ツールの流通
・新型コロナウィルス感染拡大
・海外諸国での導入企業数の増加
・株主総会に関する会社法改正
バーチャル環境での株主総会が注目される背景として、通信環境が安定し、高機能なWeb会議ツールの流通が拡大したことが挙げられます。新型コロナウィルスの感染拡大で集会そのものが難しくなり、オンライン化が進んでいることも大きく影響しているでしょう。
アメリカをはじめ、海外各国でもバーチャル株主総会の導入が進んでいます。特に国土が広大なアメリカでは、移動や開催日程調整の観点からもバーチャル株主総会を推奨する企業が多くみられるようです。経済産業省※1によれば、アメリカで2018年に開催が予想されたバーチャル株主総会は少なくとも300社に上り、2009年の約100倍に相当します。
国内では2021年の産業競争力強化法改正に伴い、上場企業でバーチャルオンリー株主総会が開催可能になりました。これが追い風となり、2021年6月のバーチャル株主総会の開催企業は、ハイブリッド出席型が2020年6月の9社から14社に増加。ハイブリッド参加型は、2020年6月の113社から309社に増加していることがわかっています。※2
※1 経済産業省「バーチャル株主総会をめぐる海外動向」
※2 日本取引所グループ金融商品取引法研究会「バーチャル株主総会について」
・参加方法の多様化により株主重視の姿勢をアピールできる
・株主総会の透明性を向上できる
・運営コストを削減できる
・株主が複数の株主総会を傍聴・出席しやすい
メリットが浸透するにしたがって、多くの企業にバーチャル株主総会が採用されるようになってきました。ここでは、従来の対面式と比較した、バーチャル株主総会ならではの利点について解説します。
バーチャル参加・出席を可能とすることで、今まで物理的な理由により参加が難しかった株主も参加しやすくなります。多くの株主の意見を聞ける環境を整えることで、株主の意見を重視する姿勢をアピールでき、株主からの信頼獲得につなげられるのが利点です。
株主の参加機会の拡大により、より開かれた透明性の高い株主総会にできるメリットもあります。物理的に参加が難しかった株主が参加しやすくなるほか、インターネット等の活用で株主総会の審議内容を確認することも容易になり、結果として企業の信頼性向上にもつながるでしょう。
会場利用料や人件費などの運営コストの削減も、大きな利点です。バーチャルオンリー型の場合、物理的な会場の確保が不要です。またハイブリッド型の場合も、バーチャル参加・出席を希望する株主とリアル株主総会参加に分散されるため、会場規模を縮小したり、自社スペースで開催したりすることも可能。会場規模の縮小は、会場スタッフの人件費のみならず手間や時間も削減でき、株主総会運営の効率化につながります。
バーチャル株主総会の導入により、移動時間や開催場所の制限がなくなります。複数の株主総会を控えている株主は、バーチャル参加・出席ができると、より多くの株主総会の傍聴・出席が可能になります。
バーチャル株主総会は、取締役や株主等が一度に同じ空間に集結することなく開催できます。そのため、ウイルスの集団感染や天候不良、交通トラブルなどによる遅延・延期のリスクを低減できるでしょう。
・ハイブリッド型
A:ハイブリッド参加型
B:ハイブリッド出席型
・バーチャルオンリー型
オンライン上で開催する株主総会の、ハイブリッド型とバーチャルオンリー型について詳しく解説します。ハイブリッド型の参加型と出席型では、株主の権限行使が法律上異なりますので、注意点も留意しておきましょう。
ハイブリッド型は、リアル株主総会を物理的な会場で開催するとともに、オンライン上で出席ができる株主総会の形式です。リアル株主総会の場にいない株主がインターネット等で出席する場合、2通りの参加方法があります。2通りの参加方法は「参加型」と「出席型」とよばれ、それぞれ法律で制定されている株主の権限が異なります。
【特徴】
・インターネット「参加型」の場合は、株主は傍聴のみ可能
・株主からのコメント紹介や事前に受諾済の質問への回答などは認められるケースも
【参加方法】
・株主総会の入場URLと、アクセスするためのID・パスワードが配布される
・株主総会開催時間に入場URLにアクセスし、ID・パスワードを入力して株主総会に参加する
【利点】
・会場に出向くことなく、リアルタイムで審議の確認・傍聴ができる
・時間の制約を最小限に抑えられ、複数の株主総会を傍聴しやすい
【注意点】
・決議には参加できない
・議決権行使の意思のある株主は、事前の対応が必要
・株主がインターネット等を活用可能なことが前提
・円滑なバーチャル参加に向けた環境整備が必要
・映像配信にあたり肖像権等への配慮が必要
インターネット等の手段を用いて参加する株主は、審議の確認・傍聴ができる一方、当日の決議への参加(議決権行使)や質問、動議ができません。ただし議長の裁量で、多くの株主の関心が高いと思われるコメントの紹介や回答が行われるケースもあります。
議決権を行使したい株主は、事前に書面やその他の方法での議決が可能か企業に確認したり、代理人による議決権行使の手続きをとったりする必要があります。
なお、映像配信には、リアル株主総会に参加している株主の肖像権等への配慮が求められます。株主限定で配信する場合は問題が発生しにくいとされていますが※1、個人を特定する名称や映り込みへの事前承諾、あるいは議長や主催側のみ撮影するなどの対策が望ましいでしょう。株主以外の第三者への共有を承認しない旨も周知しておくと混乱を回避できます。
【特徴】
・バーチャル参加の場合でも、リアル株式総会に出席と同等の権限がある
・出席者は決議行使ができ、リアルタイムで質問や投票に関与できる
【参加方法】
・株主総会の入場URLと、アクセスするためのID・パスワードが配布される
・株主総会開催時間に入場URLにアクセスし、ID・パスワードを入力して株主総会に出席する
【利点】
・遠隔地からの参加でも、リアル株主総会への質疑等を踏まえた議決権の行使が可能
・質問の形態が広がることで、株主総会における議論(対話)が深まる
・個人株主の議決権行使の活性化を促せる
【注意点】
・質問の選別が恣意的にならないよう注意する必要がある
・決議取消事由にあたるケースについて認識・経験不足のリスクがある
・質問の濫用・乱発につながるリスクがある
・株主がインターネット等を活用可能なことが前提
・円滑なバーチャル出席に向けた関係者間の調整やシステム活用等の環境整備が必要
株主はリアル株主総会と同様に、議決権の行使や質問、動議ができ、議長側は質疑応答の平等性を図る必要があります。動画配信システムは、軽微な通信の遅れが発生する可能性があるほか、大量のアクセスによりつながりにくくなる状況も予想されます。
議決権行使から賛否結果までは、一定の間隔を設け余裕をもって運用するとともに、電話やチャット、メッセージングで通信障害の代替手段を準備するなどの対策も行いましょう。通信障害リスクを事前告知し、株主にあらかじめ認識してもらうことも大切です。
またオンライン上で株主総会を実施するにあたり、安全性やバックアップサポートの観点から考えると株主総会専用ツールが便利です。一定の決議権を有する株主には、厳格な本人確認を行ってなりすまし対策を講じるなど、セキュリティ対策を徹底しましょう。
【特徴】
・取締役や株主等の全員が、リアル株主総会を設けずにインターネットを介して参加する
【参加方法】
・株主総会を開催するWebプラットフォームに参加するためのIDとパスワードが発行される
・参加者は開催時間にIDとパスワードを入力して総会に出席
【利点】
・遠隔地の株主を含む多くの株主が出席しやすい
・物理的な会場の確保が不要になり、コスト面を削減できる
・感染症のリスクの削減やロックダウンによる延期などの問題が発生しない
【注意点】
・開催要件を満たしている必要がある
・配信リスクに対する万全な対策が必須
バーチャルオンリー型は、物理的な会場を設けずに(場所の定めのない)、取締役や株主等がインターネット等を活用して株主総会に出席する形式です。開催には「上場会社である」「省令要件該当性について経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けている」「定款の定めがある」「招集決定時に省令条件に該当している」という4つの条件を満たさなくてはなりません。
ハイブリット型と同様にバーチャルオンリー型においても円滑な通信環境は最重要課題です。事前の配信テスト実施はもちろんのこと、複数インターネット回線の確保や配信ツールの併用など、万が一のトラブル対策に注力しましょう。
・安定したインターネット環境の整備
・サイバー攻撃の発生を想定したセキュリティ対策
・信頼できるバーチャル株主総会支援サービスの導入
デジタル化の流れを受けて、経済産業省はバーチャル株主総会の開催を推奨しています。バーチャル株主総会の開催に際し、準備しておくべきことについて詳しく解説します。
通信障害が発生しないように安定したインターネット環境を整備する必要があります。通信環境は、ソフトウェアとの互換性や使用するツールなどにも影響されるため、通信状態をよく確認しましょう。
事前に実際の環境を想定したリハーサルを行い、トラブル発生時のフローについても万全の準備をすると安心です。対処法などをマニュアル化し、サポート要員を確保するなどの具体策を講じておきましょう。
サイバー攻撃によって株主総会の開催を妨害される可能性もあることを念頭におき、サイバーセキュリティ対策を行う必要があります。
出席確認をID・パスワードのみで行う場合は、なりすましによる議決権行使の悪用につながらないよう万全な対策をしておきましょう。本人確認の二段階承認や、改ざん不能なブロックチェーン技術の活用なども得策です。
運営側の負担が大きいバーチャル株主総会は、信頼できるサービスの導入を検討しましょう。質疑応答等の機能が充実した、バーチャル株主総会に対応する専用サービスがおすすめです。
専用サービスは、準備段階から計画的に進行でき、当日の動画配信や編集、アフターフォロー、改善点の見直しのためのデータ分析など、包括的な機能を備えています。株主総会のスムーズなオペレーションは、株主からの信頼獲得につながり、企業のイメージ向上が期待できるでしょう。
バーチャル株式総会は、信頼性と利便性が確保されてこそ開催できる株主総会の理想の開催形式といえます。仮想空間でのバーチャル体験を提供するZIKUなら、リアル株主総会に出席するような臨場感を味わうことが可能です。対面式に近いリアリティを体験できる、より株主の目線に立った株式総会を導入してみてはいかがでしょうか。バーチャル株式総会やIR関連イベントの開催を検討する際には、メタバースイベントプラットフォームZIKUをぜひご検討ください