今、インターネット上の仮想空間「メタバース」内で打ち出される広告に注目が集まっており、世界的大手企業のほか、日本の大手広告代理店も参入しています。このコラムでは、実際のメタバース上での広告の打ち出し方や、事例を紹介します。メタバース広告を検討している方はぜひご覧ください。
「メタバース広告」とは、メタバース空間の中で広告を打ち出すこと(メタバースを利用した広告のこと)を言います。
メタバースとはWeb上の空間の中で、アバター(自分の分身)をつかって他者と交流し、社会生活を送る3Dの仮想空間です。
・メタバース空間内に広告スペースを作る
・メタバース空間内にショップを開く
・メタバース空間内で3DアバターにPRさせる
メタバース空間内で具体的にどのように広告を打ち出すのか、その方法とそれぞれの特徴を詳しく解説します。
メタバース上の不動産(建物、ポールなど)に広告スペースを作り、広告を表示させる方法です。活動中のアバターが周りを見渡した際に実際に目に入る形で広告が表示されます。この広告は、検索結果に連動して広告が表示されるリスティング広告のように、ピンポイントのターゲットにアプローチします。
メタバース空間の中に自社ブランドの店を開く方法です。商品を3Dで再現し、メタバース上に作られた店舗に陳列できます。そして、アバターとなったスタッフが接客対応を行うことで、ユーザーは現実世界と近い感覚でショッピングを楽しめます。メタバース空間に出店したこと自体が話題にもなるため、ブランドの認知度向上も期待できます。
メタバース上でAIの3Dアバター「デジタルヒューマン」に宣伝させる方法もあります。デジタルヒューマンは人が操作するアバターではなく、AIが搭載されたメタバース上の「ヒト型ロボット」です。デジタルヒューマンの言動はプログラミングが可能。そのため、人間のリアルな意見を伝えることはできないものの、企業にとって不都合な発信を防げるほか、休みなく業務を行うことができます。
・商品やサービスの世界観に没入してもらえる
・デジタル広告の技術を適用しやすい
・企業イメージを向上できる
まだ活用事例が豊富ではない中で、メタバースを広告につかうことは企業にとってメリットがたくさんあります。
2Dのオンライン形式では表現しきれなかった、実店舗が持つ「ブランドイメージ」や「世界観」をメタバース空間の中では再現できます。これにより、ユーザーはブランドの世界観に没入しやすく、企業側は伝えたい情報や生産者の思いを伝えやすくなりました。
メタバースでの広告は、これまでの動画広告やポップアップ広告以上に魅力を感じてもらいやすいことから、ユーザーの購買意欲を高め、売り上げアップにつなげることが期待できます。
インターネット上で展開されるデジタル広告をすでに打ち出している企業であれば、メタバースへの参入も難しくありません。デジタル広告は、ユーザーニーズに合わせて、個人にアプローチする広告です。そのため、顧客データに基づいたターゲット広告のノウハウをすでに持った企業であれば、その技術をメタバースに応用できます。
メタバースはまだまだ参入している企業が少ないため、参入すること自体に話題性があります。これまでとは違う新しいユーザー層からの注目も集められるため、より多くの人に企業のことを知ってもらえる機会となるでしょう。また、新しい分野へ参入する企業のチャレンジ精神も評価され、企業イメージアップに繋がります。
・広告過剰になりやすい
・実際の商品・サービスとの差が生まれやすい
・法の整備がまだ追い付いていない
メタバースは新しい取り組みであるために、ルールが整備されていないことも多く、利用する際は注意が必要です。
すでにWebやSNS上では広告が過剰に表示され、使いにくいと不満を持つユーザーもいます。大量の広告表示によって満足度への悪影響が懸念される中で、メタバースだとさらに広告が過剰になる可能性も。ユーザーを購買に結び付けるはずの広告で、かえってユーザーにマイナスのイメージを与えないよう配慮する必要があります。
メタバースは仮想空間であり、実物を手に取って購入を検討することはできません。そのため、購入後に実際に商品やサービスが手元に届いたときに、ユーザーが期待していたものとの差異を感じる可能性があります。企業側はメタバースの強みである、リアリティー性を活かして、実物との違いが生まれないような広告を製作する意識が必要です。
現行の法令のほとんどはメタバースを想定したものではないため、メタバース内でトラブルが発生した際の法的対処は難しいケースが多いでしょう。ネットやSNS同様、なりすましや個人情報の流出の懸念もあり、早急な法整備が必要な状態です。メタバース広告に参入する際は、上記の懸念事項をふまえたうえで始めましょう。
現メタバース広告を活用した企業の事例を3社紹介します。検討している方は参考にしてみてください。
総合広告代理店である「株式会社博報堂」と「株式会社博報堂DYメディアパートナーズ」は共同プロジェクトとして、メタバースにおける広告体験の設計・配信システム・効果測定サービスの開発を開始しました。
最初の取り組みとして、スマートフォン向けアプリ「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」と共同で、広告設計などを検証しています。このアプリでは、株式会社三越伊勢丹が提供する仮想都市にアクセス可能。仮想都市内の伊勢丹新宿店では、気に入った商品があれば実際に購入することも可能です。
NTT(日本電信電話株式会社)と株式会社電通は、「東京ゲームショウ VR 2021」においてVR広告の共同実証を実施しました。VRイベント空間におけるイベントプラットフォームと広告モデルのあり方を検討することを目的としています。
3D広告体験例として、VRならではのユーザー体験の提供、臨場感あるブランド訴求、キャラクターの案内による導線設計などを実証しました。
社名をMetaに変更した元Facebook社は有料のVR決闘ゲーム「Blaston」内で広告テストを行いました。VR業界にとって何がプラスに機能するかを確かめるため、メタバースプラットフォームにおいて収益を得られる新たな方法を模索することが目的です。広告テストの結果、「Blaston」はフィットしていないと判断され現在は撤退しています。
メタバース広告の魅力や、ビジネスとしての将来性、現実世界との関係性を解説しました。いくつかの課題はあるものの、新しい集客のあり方としてメタバース広告を視野に入れることは大きなメリットとなるでしょう。
メタバースを利用したマーケティングには、メタバースイベントも効果的です。ZIKUではメタバースイベントプラットフォームを提供しており、すでに大手企業様が主催するセミナーや展示会等にてご利用いただいております。メタバースイベントにご興味のある方はぜひZIKUにお問い合わせください。