オンラインゲームやバーチャルイベントをはじめ、最近ではビジネスにも取り入れられているメタバース。その概念や主なプラットフォーム、注目されている理由および課題について、解説します。言葉を耳にしたことはあっても、そもそもメタバースとは何か今ひとつ分からないという方は、ぜひ理解の一助としてください。
メタバース(Metaverse)とは、コンピュータ内やインターネット上に構築された3D仮想空間のこと。「メタ(meta)=超越した」と「ユニバース(universe)=宇宙」を組み合わせた造語です。利用者は自分の分身である「アバター」を使って、メタバースの中で他者と交流しながら物理空間を超えた活動ができます。
最新技術のイメージが強いメタバースですが、1992年の小説「スノウ・クラッシュ」で既に仮想空間についての言及があり、その概念は昔から存在していました。2021年に米Facebook社が社名を「Meta」に変更し、メタバース事業への注力を発表したことから、今改めて大きな注目を集めています。
ひとくくりにメタバースといっても様々なサービスがありますが、主に以下の3種類に大別できます。デジタル世界と現実世界のリンクのさせ方という点で、それぞれ特徴が異なります。
VR | AR | バーチャルワールド | |
---|---|---|---|
意味 | 仮想現実 | 拡張現実 | 仮想的な世界 |
特徴 | デジタル世界の中で現実の物理的な情報を手に入れられる | スマホなどを使って、現実世界にデジタル情報を表示する | デジタルのみで世界が成立している |
メタバースプラットフォームとは、文字通りメタバースを利用するためのサービス基盤・仕組みのことを指します。米Linden Lab社の「Second Life」が2003年に発表されると、IBM やトヨタ自動車などの大企業も含めて、様々な企業がそのサービスに参入。それをきっかけにメタバースプラットフォームは世界中から脚光を浴びることになりました。
日本でも2007 年頃に多くのメディアで取り上げられ、一時的に注目を集めました。近年はVR・AR技術やデバイスの進化などを背景として、オンラインゲームを中心に数多くのメタバースプラットフォームが開発されています。
名称 | 種類 | 特徴 |
---|---|---|
Second Life | プラットフォームの先駆けで、売買や通貨換金などが可能 | |
Horizon Workrooms | VR会議室でつながり、新しいチームワークの形を実現 | |
REALITY XR cloud | 自分好みのアバターを作り、スマホ一台で手軽に使えるバーチャル配信アプリ | |
Decentraland | イーサリアムブロックチェーン技術を活用したVRソーシャルプラットフォーム | |
Cryptovoxels | イーサリアムブロックチェーン上でNFT売買もできる | |
Roblox | Z世代からの支持を集めるオンラインゲーミングプラットフォーム | |
The Sand box | イーサリアムブロックチェーン上のユーザー主導のゲームプラットフォーム | |
cluster | PCでもスマホでもVRでも。手元のデバイスで気軽にバーチャル体験 |
現在続々と魅力的なメタバースプラットフォームがリリースされています。ここでは国内外で注目されているものを中心に、代表的な8つのプラットフォームについて紹介します。
2003年に発表された、現在のメタバースプラットフォームの先駆け的存在です。仮想空間内にある土地を所有・売買したり、独自の暗号資産(仮想通貨)リンデンドルで取引できたり、現実の通貨への換金も可能な点などから、人気を博しました。年間3億件以上の取引が行われ、リリース以来世界中で圧倒的なシェアを実現しています。
クライアント向けのビューアがオープンソース化され、公式ビューアだけでなく、様々な公認/非公認ビューアがあることも大きな特徴です。
現在、多くの企業でリモートワークが当たり前となっています。Horizon Workroomsは、チームメンバーがVR空間に集まって仕事することで、ロケーションにとらわれず、柔軟で効率的な働き方をサポートします。
表情豊かなアバターを介し、リアルに同じ空間で働いているような体験ができるのが特徴。VR会議室内の場所によってメンバーの声が自動調整されたり、自分のPCやキーボードをVR空間に持ち込んで使ったりできます。バーチャルホワイトボードにアイデアを書き出してブレインストーミングするなど、生産性を高める機能も充実しています。
分好みにカスタマイズした3Dアバターを使って、顔出しせずにスマホ一台でライブ配信を行えるアプリ。スマホのインカメラで表情を読み取って、リアルタイムでアバターを動かすことができ、複数人でのコラボ配信も可能です。
24時間様々な配信が行われているのでギフトやコメントを送って参加したり、他のユーザーとバーチャルコミュニティで交流したり、コミュニケーションが楽しめます。
イーサリアムのブロックチェーンを利用したソーシャルプラットフォーム。企業による運営ではなく、参加ユーザーによる投票で運営方針やルールを決める、分散型のコミュニティガバナンスモデルであることが特徴です。
独自の仮想通貨MANAを使ってゲームやイベントに参加したり、アイテムを購入したりできるほか、アイテムやコンテンツの制作・販売をすることによって、収益化も可能。NFTとして発行される仮想土地を売買したり、所有する土地に建物や商業施設などを配置したりして自由にカスタマイズもできます。
イーサリアムのブロックチェーンで動くメタバース。ユーザーはアバターを設定し、テキストチャットやボイスチャットで他ユーザーとのコミュニケーションを楽しめます。レゴブロックのように、立方体(ボクセル)を積み上げて作る3D空間が特徴で、VRにも対応しています。
仮想土地を売買したり、所有する土地に店舗などを建築してオブジェクトを配置したり、NFTの展示・売買などもできる点で、Decentralandとサービスが似ています。
2021年に1日あたりのアクティブユーザーが4900万人以上を突破した、急成長中のオンラインゲーミングプラットフォーム。Z世代と言われるティーンエイジャー層がメインユーザーです。
個人や企業によって制作された様々なジャンルのゲームが5000万以上公開されています。お金をかけてアイテムを購入したり、時間を費やして攻略したりするゲームは少なく、ゲームを通じた交流を楽しむことを目的としているユーザーが多いのが特徴です。
イーサリアムのブロックチェーン技術を活用した話題のゲーミングプラットフォーム。4000万回ダウンロードを達成し、全世界から注目を集めています。仮想空間内で他ユーザーとチャットや会話を楽しめるほか、独自の仮想通貨SANDを利用して土地を購入し、ゲームやアイテム、キャラクターを取得して売買することが可能。
立方体を組み立てて作るボクセルアートでオリジナルのキャラクターやアイテム、建物を制作したり、3Dゲームを作ったり、自分の作品をNFTとして販売して収益化もできます。
3Dアバターを使って仮想空間内を楽しめるバーチャルSNSプラットフォーム。個人や企業が制作して公開している様々なワールドに遊びに行き、探索やゲームなどを楽しめます。ユーザー同士はチャットや音声でコミュニケーションでき、フレンド登録機能も。
プログラミングなどの専門知識なしで、自分でも簡単にワールドを作成でき、他ユーザーを招待して遊んでもらうことも可能です。企業が開催するイベントやVR音楽ライブに参加したり、自分で無料イベントを開催したりすることもできます。
概念自体は過去からあったにも関わらず、今急速に注目度が増しているメタバース。そこには、技術の進化やそれに伴う価値観の変化、感染症による行動変容など、大きく4つの理由が関係しています。
3DCGやVR技術が進化したことで、仮想空間内での視覚体験が飛躍的に向上し、身振りや顔の表情などによりアバターをリアルに近づけて操作できるようになりました。これまでとは一線を画す、自然で新しいコミュニケーションの形が生まれたことは、メタバースの活用を後押しした大きな要因と言えるでしょう。
G等の通信技術の進化および普及も、重要な背景の一つです。PCはもちろん、スマートフォンやタブレット端末など各種デバイスのスペックの向上は目ざましく、ユーザーはより高速かつスムーズに仮想空間に接続できるようなりました。
従来、デジタルデータはコピーや改ざんが容易なため、海賊版や不正コピーが出回ることも多く、現物の資産やアート作品のように価値を持たせることは難しいとされていました。
しかしブロックチェーン技術を用いたNFT(デジタル資産)や暗号化資産が登場したことで、偽造がしにくくなり、デジタルデータに新たな資産価値が発生しました。コンテンツやアイテムの売買をメタバース上で行えるサービスなども増え、活用の幅が広がっています。
新型コロナウィルスの感染拡大により、リアルでのイベント開催は中止となり、自宅にいる時間が長くなりました。代わりにリモート会議やウェビナー、オンラインイベントなど、非対面でのコミュニケーションが増加し、新しい生活様式がスタンダードに。
こうしたコロナウィルスの影響による急速なデジタル・トランスフォーメーション化も、メタバース業界拡大の追い風となっています。
メタバースプラットフォームは、2007年頃に一度日本で注目の兆しを見せたものの、各企業が抱えていた課題によりブームは沈静化してしまいます。当時に比べるとデジタル技術や価値観も大きく変化していますが、依然として存在する課題および今後解決すべき点として、2つの観点から詳しく見ていきましょう。
メタバースプラットフォームのビジネス拡大のためには、企業側・ユーザー側双方に技術的な課題が存在します。
経済産業省が2021年7月に公表した「仮想空間の今後の可能性と諸課題」に関する調査報告書によると、XR領域※の技術者は依然として不足しています。業界知見を持ちビジネス設計など上流工程を担える人材も足りず、企業側にとって優秀な人材の確保は急務です。
更に、ユーザー側の利用環境整備も万全と言える状況ではありません。一般消費者の多くが所有するスマートフォンは、3DCGをストレスなく体験するには性能が十分でないケースも多々あります。VR用ヘッドマウントディスプレイも、価格面やVR酔い対策など安全性への配慮、サイズ、重さなどまだまだ課題も多く、更なるデバイスの進化が求められます。
先に挙げた経済産業省の調査報告書では、マネタイズ手段の構築も重要課題の一つとされています。仮想空間内でのコンテンツは、最先端技術が必要となるため製作コストがかさみがち。ユーザー獲得のために企業側が無償でサービスを提供しているケースも多く、ビジネス市場拡大のためには収益化モデルの構築がキーポイントとなるでしょう。
加えて現在のメタバース市場は、ユーザーリテラシーの高い一部利用者にとどまっている段階で、ビジネスへの活用も限定的です。広く一般消費者まで利用を拡大させることができれば、マーケティング目的など企業の参入も更に増えていくことが期待されます。そのため、効果的な集客方法を検討していく必要があると言えます。
メタバースは今後も急成長が見込まれる、大きな可能性を秘めた分野です。既に多くのメタバースプラットがリリースされていますが、事業方針の転換を発表したMeta社(旧Facebook)をはじめ、メタバース事業に参入し投資を行う企業は更に増加していくでしょう。
しかし新領域であるゆえに、まだまだ多くの課題を抱えていることも事実。3DCGコンテンツの制作は技術面でも費用面でも難易度が高く、新たにメタバースサービス事業に参入したい企業にとって大きなハードルです。
株式会社ジクウでは、ノウハウの少ない企業でも簡単にメタバースイベントが実施できる、アバターを使ったメタバースイベントプラットフォーム「ZIKU」を提供しています。CG制作不要でワンストップでのイベント開催を実現。メタバース空間でのイベントをお考えの企業は、ぜひご検討下さい。
公開日:2022/05/26 最終更新日:2024/04/10